京都大学経営管理大学院主催,㈱KBS総研,S―イノベーションデザイン㈱共催の「第7回考えるシンポジウム」(2019年11月10日開催)に登壇し,今年の「これ以上,京都に宿泊施設は必要か」というテーマについて,ディスカッションを行いました。
いわゆる宿泊特化型のホテルは十分供給されつつあるのですが、高付加価値型ホテルはまだ不足しており,この部分の充実が求められています。また,単純に宿泊料金が高いホテルを高級ホテルと呼ぶのではなく,あえて,「高付加価値型ホテル」とする点に意味を込めています。この存在こそが,地元地域活性と直結する価値を提供することができると,当社は認識しているためです。高付加価値型ホテルとは,ホテルを形成する3要素である「ハードウェア(施設設備)」「ソフトウェア(商品サービス)」「ヒューマンウェア(人材)」の質を高め,顧客に豊かな経験価値を提供するホテルです。この3要素の充実なくして,単なるSDカーブ(需給カーブ)によって料金を乱高下させることは,結果的に顧客を失うことになってしまいます。宿泊客だけではなく,地元住民を含めた,全方位のステークホテルダーの観察し,ニーズに応えていくことで,その土地ならではの魅力を備えたホテルを醸成できれば,観光客は故郷に帰って,そのホテルと土地の魅力を伝える「語り部」となり,地元住民もホテルを通じて,自らの観光資源を再発見し,誇りをもって,ホテルと共存共栄できるようになる。更に,こうしたロイヤルティの高い内外の顧客に支えられ,従業員のサービスも磨かれていく。市場が成熟し,グローバル化が推し進められた現在においては,ホテル事業というものを,単なる宿屋ではなく,こうした俯瞰したストーリーを内包し,サービスとマネジメントに反映するコンセプトとスキルが重要です。それは,競争優位の源泉を支える土台となるといえるでしょう。
関連ページ:㈱KBS総研 広報誌より
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